『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』は完成品だ

89%

アニメ映画データ

作品名:クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ

製作会社:シンエイ動画,テレビ朝日,ADK

監督:水島努

公開:2004年4月17日

時間:96分

この作品は良い。良すぎる。導入からラストまで素晴らしい出来だと思う。

クレヨンしんちゃんの映画を全部観よう企画。劇場映画シリーズ12作目。監督は前作の「嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」と同じ水島努監督。

前作があまりにひどく酷評したものだが、この作品は良い!クレヨンしんちゃん劇場版のひとつの完成形だと思う。ギャグあり涙あり。そのバランスが非情に良い。徹底した悪役を創りだしたことも今までの作品と一線を画している。

あらすじ

鬼がいろんな役になりきって行うリアル鬼ごっこをして遊ぶ、かすかべ防衛隊。街中を逃げ回っているうちに一同はカスカベ座という古びた映画館を発見する。

陽も暮れていた為、風間君などは帰ろうと提案するが好奇心旺盛のしんちゃんは窓から中へ入ってしまう。仕方なく残りの4人も映画館へ。

そこには当然人ひとりいない映画館だったのだが、不思議なことに誰もいない劇場には映画が上映されている。タダで映画が観れるとかすかべ防衛隊の5人は椅子に座って閲覧することに。

途中、しんちゃんはおしっこに行きたくなってしまい、席を立つ。すっきりして気分上々で元の席に戻ると残りのかすかべ防衛隊の4人が見当たらない。しんちゃんに内緒で帰ってしまったらしい。

オラに内緒で帰るなんてとぼやきながら自宅に着くと、みさえにこんな遅くまでどこ行っていたの!と一喝。ちょうどその時電話がかかってきて、風間君たち4人は誰もまだ家に帰ってきていないとの連絡だった。

しんちゃんはみさえとひろしに状況を説明し、もう一度かすかべ座へ向かう。そこではまだ映画が上映されたままだった。映画をじっと見つめる野原一家。

気が付くとそこは映画でみていた風景、全面砂漠の荒野だった。わけもわからず歩き回る野原一家。やっとのことで見つけた町はまるで西部劇のような風貌。しかしそこにいる人間はどうやら日本人のよう。

ひろしは元の世界に戻る方法を知る為に町を歩く人に春日部は知らないか?と質問するもそれらしい返答はかえって来ない。仕方なく酒場に入ると、そこは異様に殺気立ったカウボーイの集まる酒場。ひろしは柄の悪い男に吹っかけられ店内はちょっとした騒動になる。

そこに入ってきた保安官。その中にはどこをどう見ても風間君にしか見えない保安官がいた。しんちゃんは喜びを表し、風間君に近寄る。馴れ馴れしくしてくるしんちゃんに風間君に見える保安官は腹パンチをして、お前のことなど知らないと一喝。それでも諦めないしんちゃんに保安官風間君は怒り、仲間の保安官に野原一家を捕えるように指示をする。

野原一家はその場を逃げ出し、その途中、この町を仕切っているジャスティスという知事に使える「つばき」という名前の女の子に助けられる。

そのつばきちゃんからこの町の人はどこか知らない場所から来て、徐々に前にいた場所の事を忘れてしまうという事実を教えてもらう。もし帰りたいなら私は何も出来ないけれど帰りたいという気持ちを忘れないように強く心に持ち続けてとアドバイスをもらう。

そして野原一家は町にいる人のほとんどが春日部から来たことを知り、そのほとんどを忘れてしまった事を知る。町にいたマサオくんとネネちゃんは完全に前の事は忘れてしまったようだ。町のはずれにいたボーちゃんを含め、少数ながらかすかに春日部の事を覚えているものもいて、なんとか帰る方法を探し回る。

町を牛耳っている知事ジャスティスの横暴と対峙し、野原一家は無事に元の世界へ戻る事が出来るのであろうか…

こんな感じのあらすじです。

家族愛から友情愛へ

今までの劇場版クレヨンしんちゃんは主に野原一家がメインで敵と戦う中で野原一家の愛を深めるというものが多かったですが、今回の作品は一変してプレオープニングからかすかべ防衛隊が登場し、この5人が今回のテーマなのだと想像させます。考えてみれば、オープニングテーマが流れる前のプレオープニングでかすかべ防衛隊の面々が出てきたのは初めての事ですね。

前作の「嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」では、しんちゃんを裏切ったかすかべ防衛隊がいましたが、アレは前フリだったのではないかと思える程。

風間君がしんちゃんのお腹をパンチをする所や、マサオ君やネネちゃんが過去を完全に忘れてしまっている点など、前回の密告だけで終わった友情の亀裂がもっと深刻に深い溝である事を表している気がします。

その完全に崩壊してしまった友情を、映画の世界を救いに来た5人のヒーローとして再集結させ、雨降って地固まる方式でさらに友情を深めていきます。かすかべ防衛隊の掛け声が最後のキーワードになっている点からもそれが伝わってきます。

それと前々から思っていたことなんだけれど、ボーちゃんが言うひとことってかなり格言めいていてハッとする。大切なものを失って落ち込んでいるしんちゃんに対しての一言。

「代わりと言っちゃなんだけど、僕たちがいる」

この作品の良い所はキャラが立っている所

劇場版毎に登場するおねいさん枠が今回は中学生ぐらいの年のつばきというキャラ。このつばきちゃんが何ともけなげでものすごくかわいい。ネットで検索してみても、このつばきちゃんはかなり人気のようだ。

そもそも。

声優の齋藤彩夏の声が良い。本当にけなげな声を出しなさる…。やべぇ。つばきちゃんかわいい。

裏設定として、劇中で彼女がずっと裸足なのは、過去にジャスティスの前で失敗をして、外で靴を履くのを禁止されたからだという。幸せな雰囲気をかもしだすため、エンディングでは彼女は靴を履いている。

それに今回の敵役、知事ジャスティス。敵役が今までの劇場版だとひとつ人間味あふれる部分を見せて、憎み切れなかった部分があったのに対して、このジャスティスに関しては悪役に徹している。

みさえとしんちゃんをボコボコにしてダストシュートから川へ捨てるシーンなど、観ていられないぐらい悲惨なシーンだった。しんちゃんっぽくないと言えばそうなんだが、この映画の中ではかなり必要なシーンだったと思う。

敵は敵らしく。ヒロインはヒロインらしく。

そして、今までは敵の組織には大抵3人ぐらい名前の付いた幹部がいたけれど、名前がついていたのはジャスティスだけ。味方も必要以上に名前を与えず、名前の付いたキャラがしっかりとキャラ立ちするようになっているのが素晴らしい。

水島努監督が担当したのは2作だけ

今回、監督を担当したのは前回の嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロードも担当した水島努。

この監督は昔、美味しんぼでちょっとやらかしたみたいで、企業内失業していたところ、「ブリブリ王国の秘宝」で、当時の監督だった本郷みつるに演出助手として拾ってもらったらしい。周りはだいぶ反対をしていたみたいだが、本郷みつるの強い要望だったようだ。

水島努が監督をする前に劇場版クレヨンしんちゃんの監督を務めたのはこの本郷みつると原恵一の二人だが、水島努はこの二人の事を神さまと崇めているようです。

ただ、この二人からはブラックユーモアやバイオレンスな演出を多用することから、頻繁に叱られていたみたいです。そのバイオレンスな演出が今回で言うとみさえとしんちゃんをダストシュートから川に捨てるというシーンみたいなことなんでしょう。

敵役に憎みきれない要素を排除したのもこの監督ならではの演出だったのかもしれない。

前回はかなり酷評しましたが、この作品を観てみて水島努監督の評価を見直しました。それでこの監督の事について調べてみる事になったのです。

過去にこのサイトでレビューしたこのある作品で言えば、「Another」

「イカ娘」とか「おおきく振りかぶって」とか僕の好きな作品の監督もやっていて、比較的露出の多い監督のようです。たった2作品で交代してしまったのはちょっと残念。

まとめ

今まで、3人の監督が劇場版クレヨンしんちゃんを手掛けていますが、各それぞれ僕の主観で名作をあげるとすれば、本郷みつる「ヘンダーランドの大冒険」、原恵一「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」、そして水島努と言えばこの作品でしょう。

それぞれ雰囲気が違って見所も違う。監督一つで作品というのは変わるもんだなと、監督に注目して観てみるのも楽しいかもしれません。

この作品は安心してオススメ出来る良作です。

ではでは。

あ、今回の実在する人物枠はNO PLAN(内村光良、さまぁ〜ず、TIM、ふかわりょう)でした。

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野口明人の「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」レビュー
  • ストーリー - 90%
    90%
  • 演出 - 90%
    90%
  • キャラクター - 90%
    90%
  • 引き込まれ度 - 100%
    100%
  • メッセージ性 - 75%
    75%

Summary

この作品は劇場版クレヨンしんちゃんのひとつの完成形。

89%
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ABOUTこの記事をかいた人

好きな映画は『オーロラの彼方へ』。好きな小説は『十八の夏』。好きなCDは『Return to Forever』。好きな漫画は『惑星のさみだれ』。趣味はロードバイクで日本をぐるぐる。そんなノッポでうずまきな30代。埼玉出身。ブログは今年で9年目!!記事少ないけど。…でも、それぞれ魂込めて書いてきたはず。だから、今日も読んでくれてありがとう!